スラッシュ☆モンスター
第T部@

・☆ 11.ソイル探しへさあ出発!

「レイユウ、君、何処から来たの?」
 僕は訊いた。ま、答えは分かってたけどね。
 案の定、
海の町(スィー・タウン)だよ。知ってるだろ?」
 と返されて、えへっと僕は顔を赤らめた。ま、これも計算のうちだけどね!
「じゃあやっぱり、南中央(サウス・セントラル)海岸で……」
「そう。アソコで君達を見ていたのは、僕」
 レイユウは瞳を静かに閉じた。少し間をおき、語り出す。
海の町(スィー・タウン)には……子供が少ない。海の町(スィー・タウン)に子供が少ないわけじゃないや、近くに暮らしてないだけだけどね」
「そうなの?」
「うん。実はね。海の町(スィー・タウン)は観光地として知られてる。だから、何処の家も何かしら商売をやってるんだ。だから、遊び相手がいなかった。うらやましかったんだ、君達が」
「…………」
 僕は黙ってレイユウの話を聞いてた。観光地であるから、子供同士で遊べない……それは、家業の手伝いとかをしなければいけないからなのかな。兎に角、レイユウは寂しかったんだ。
「……へへっ、なんか、つまんないこと、言っちゃったね。忘れて、いいよ、今の」
「ううん」
 僕はふるふると首を横に振る。忘れられるわけ、ないじゃないか!
「じゃあ、中央市(セントラル・シティ)に来て正解だったよ。ココには、楽しい仲間が沢山いるから」
 そこで僕は、ピンと思いついたんだ!
「そうだ!」
 レイユウに駆け寄って、両手を握る。
「僕の友達にも会いに行かない? そうだ、行こうよ!」
 其れを聞いたレイユウは、ぱっと顔を輝かせて、
「うん!」
 って頷いてくれた。
「行こう!」
 僕はレイユウの手を引いて駆け出した。

 

 まずは……うーん、ルルの家!
「こんちわー! ルル、いますかー? レナルでーす!」
 すぐにイムリさん(憶えてる? ルルのお母さん)がルルを呼んでくれて、
「何? ……って、どなたですか?」
 出てきたルルは、レイユウを見てちょこんと首を傾げた。レイユウは堂々と胸を張って言った。
「僕は、ショル族α氏家の隣に海の町(スィー・タウン)から越してきました、プラント族γ氏のレイユウです。お見知りおきを」
 くすっとルルは笑って、レイユウに微笑みかけた。
「私は、チョル族α氏のキルルです」
「ルルさん、と呼ばれていらっしゃる」
「その通りです。中等学所、四年生」
「三年生です」
「これから、どうぞよろしく」
「こちらこそ、色々お世話になります」
 ルルとレイユウは二人で話を始めてしまった。二人だけの世界……うー、何かイライラするっ! 何でか分からないけど……何でだろ。でもズルいや、二人っきり。
「ねえねえ二人で話してないでさあ、ラウフの家にも行こうよ!」
 レイユウはそうだね、と頷いたけど、ルルは、僕の声に刺々しさがあったのに気付いたらしく、
「どうしたのレナル? 何か心配事でもあるの?」
「え、あ、」
 ど、どうしよう、どうも説明できないよ、言い訳どうしよう……
「アハハ、ちょっと疲れたみたい、でもだいじょぶだよ」
「…………」
 ルルは不可解そうだったけど、結局は無言で何も言わなかった。
「よし、ラウフのうちはこっちだよ!」

 

「イキナリなんなのさあ」
 ラウフは眠そう。さては、寝ていたな……?
「ヒトが気持ちよく寝てる時に……」
 やっぱり。訊かなくても先に教えてくれました。手間が省けた。
「ね、ね、新しい友達だよ」
 僕が言うと、とたんにラウフの眼がキラッキラに。
「ホント? ホント!?」
「本当よ」
「嘘ついてどーすんの?」
「やったあ!」
 ヒャッホーイ、と踊りまわるラウフ。全く、ちょこちょこと気分が変わる……。正直言って、少し困るよね!
「で? このコ?」
「そうだよ。僕んちの隣に越してきた、レイユウ」
「プラント族γ氏のレイユウです。お見知りおきを」
 レイユウ、ペコリ。
「こちらこそ」
 ラウフも、ペコリ。
「僕ら、いつも一緒に遊んでるんだ。レイユウもどう?」
 肩を組んでにっこり笑うと、レイユウもにっこり笑う。
「モチロン。僕なんかでいいのなら」
「大歓迎だよ!」
 とラウフは舞い上がる。
「ね!」
「そうよ。仲間は仲間。皆おんなじ。だから、学年は違っても同等に遊べるのよ」
 その言葉に、レイユウはじーんと胸に迫るものがあったようで、口を動かすけれど言葉が出ない、いわゆる『感動』状態になっちゃった。
「どうも……ありがとうございます……」
「ところでさー」
 ラウフが僕を見る。
「しゃべる動物、探すの?」
「え?」
「え?」
「え?」
 僕もルルも、レイユウも、ラウフの言葉に???。
「決まってるじゃん」
「分かりきったことでしょ?」
「しゃべる動物って、何ですか?」
 あ、そうか。レイユウにはまだしゃべる動物の話をしてないんだっけ。さっきの『え?』はレイユウだけ意味が違ったんだね。この際だ。話しちゃおう。
「しゃべる動物っていうのはね……」
 簡単に僕らの冒険を説明すると、レイユウはふむふむと頷いて、
「つまり、残りの一匹、ソイル探しを手伝ってくれっていうことだね?」
「そーゆーこと」
 ルルがウインク。
「ね、ね、面白そうでしょ? 面白そうだよね? だよね? だよね? だよ……」
「うっさい」
 僕とルル、ラウフの言葉を一蹴。ラウフは口をパッとつぐんで、ぶう〜とむくれた。でも、うるさいじゃないか。ねえ?
「で、どう? わたし達は、レイユウがうんといわなくても、ソイルを探すけど」
 レイユウは、
「……そうだな……うん、面白そうだ……」
 と少しうつむいてしばらく考えてたけど、顔を上げると、
「よし! 手伝うよ。何か面白そうじゃん」
 確として言った! やったあ!
「わーおっ! やーるじゃんっ、レイユウ!」
「何が『やーるじゃん』だよ。意味分かんない」
 ラウフの謎の言葉に、ハア、と溜め息をつく僕。全く、ラウフは唐突に変なことを言うんだから。

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