第T部@
☆ 10.新・友達プラント
「なつかしいなあ、中央市」
ルルが大きく伸びをした。
「変わってないなあ」
「当然じゃないか」
ラウフがしみじみと言い、僕は突っ込みを入れた。
そう。僕らは帰ってきたんだ、中央市へ!
「さて、解散?」
僕が訊くと、
「そうね」
とルル。
「解散!」
僕らはこぶしを天に向かって突き上げた!
僕は家に向かって走った。暑い。汗がダラダラだ。一度立ち止まって、体を震わす。こうやって汗を飛ばすんだ。あ、モチロン、周りに誰もいないのを確認してからだよ。迷惑かかっちゃうもんね。
そうやって何度も立ち止まりながら、僕はなつかしの我が家へ到着!
「ただいまー!」
「おかえり」
ちょうど母さんが出てきたところだ。余所行きの雰囲気。どうしたんだろ。何処か行くのかな?
「お隣さんに、家族が引っ越してきたのよ。ご挨拶に行くの。レナルも行く?」
モチロン!
「行く行く!」
「じゃあ、支度してきなさい」
僕は急いでうろ(ショル族α氏の家は、木のうろにあるんだ!)に飛び込んだ!
“秘密の通路”を駆け抜ける。誰もいない。ラクチンラクチン♪
あ、“秘密の通路”っていっても、だいたいのヒトは知ってるよ。ただ、どうしてもの急ぎの用じゃないと、通っちゃいけないことになってるんだ。だから、こういう時しか、なんだ。
“皆の水場”について、簡単に水を浴びて、再び“秘密の通路”を駆け抜ける。家に到着と共に、うろを飛び出す!
「れ、レナル、そんなに急がなくても大丈夫よ!」
という母さんの声を背中に聞いて、僕は『お隣さん』の家があると思しき方向へ全速力で走った!
「れ、レナル、待ちなさい! レナル!」
でも僕は、聞く耳持たず。一匹でただただ走る!
「れ、レナル、ま、待ち、って、言った、のに……」
土に出来た、新しそうな穴。此処だろうな、って待ってた僕に、やっと母さんが追いついた。ンフフ。つまり、若い僕のほうが速い、ってことさ!
「早く早く」
急かす僕に、もう、と溜め息をつく母さん。どうしたんだろ。親の気持ちは分からない僕であった。
母さんは、穴のふちに体を滑り込ませた。
「おいで」
もちろん僕はためらわずに、勢いよく穴に飛び込んだ!
長く暗いトンネル。その中を、僕と母さんは滑り降りていく。
やがて、ストン、と体が地面に降り立った。でも、イキナリだったから、僕、転んじゃった。
「イテテ……」
「レナル、気をつけなさい」
母さんに注意されて、僕はハアと溜め息をついた。母さんだって、教えてくれなかったじゃないか、ってね。
母さんは声を張り上げた。
「ごめんくださーい!」
しばらくして暗闇に眼が慣れてきた。僕は辺りを見回した。
そこは、地面に掘られた大広間。がらんどうだけど、広くて、下手な落ち方をしちゃった訪問者が壁にぶつからないようになってるようだ。あ、僕はそんなでもないよ、その場で止まったし。し、信じてよ!
そして、正面には僕くらいのモンスターが一匹通れるぐらいでアーチ型の穴があって、そこから現れたのが、僕の見覚えある姿だったから、
「あっ!!」
思わず声をあげちゃった!
だって、あの砂浜で出会った、『初めて見る不思議な種族』だったんだから!
「レナル……?」
母さんが、どうしたの、と僕を見てくる。僕は無視した。無視! だって、あのモンスターのほうに夢中だったからね!
「こんにちは」
「こんにちは」
母さんとそのモンスターは、挨拶を交わした。僕も慌てて頭を下げる。
「隣に住んでおります、ショル族α氏のレンナと申します」
あ、レンナっていうのは母さんの名前だよ。
「こちらは息子のレナル」
「れ、レナルです」
いきなり紹介されて、僕は戸惑っちゃった。
「どうぞよろしく。私は、プラント族γ氏のゲイユウと申します」
モンスター――ゲイユウさんは、軽く頭を下げた。
「よろしく」
母さんも返して、ゲイユウさんは僕を見た。
「レナル君、お年はいくつ?」
「えっと、小学三年生です」
「まあ」
ゲイユウさんは、ホホホ、と笑った! なんなんだろう?
「うちの子も三年生なのよ――レイユウ!」
ゲイユウさんは奥に向かって、誰かを呼んだ。すると、一匹のプラント族が姿を現した!
「息子の、レイユウです」
「どうも。お久しぶりです、レナルさん」
レイユウは、僕の名前をぴたりと言い当てた! どうして!?
「驚いてるね。簡単なことだよ。僕は、あそこで話を聞いていた。すると、君の名前が分かるのは当然だろう?」
あっ、そうか! そんな簡単なことに気付かないなんて! 僕、どうかしてたね。頭をポコン! って叩きたいよ。もう!
照れ隠しも兼ねて、僕はレイユウに手を差し伸べた。
「よろしく、レイユウ」
レイユウも手を差し出した。
「こちらこそ、レナル」
そして、しっかりと手を握り締める。握手、友達の証、信頼の握手だ!
「外で遊んでらっしゃい、二匹とも」
ゲイユウさんがにっこり笑いながら言って、僕らは頷くのもそこそこに、プラント族γ氏住宅を飛び出した!
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