スラッシュ☆モンスター
第T部@

・☆ 9.リーフの家で

 僕らは、周囲の森を探索した。そこで、リーフの家である、洞穴(ほらあな)を発見!
「うんしょ、うんしょ」
 と汗だくになりながら、僕らはそこに、気を失ったままのルルとリーフを運び入れた。
 ルルとリーフは眠っている。
「起きないね……」
「そうだね……」
「…………」
「…………」
「起きないね……」
「そうだね……」
「…………」
「…………」
 同じ会話が繰り返される。どうしても、元気が出ない。
 時は経ち、もういつもなら夕食の時間。おなかがグゥ〜と鳴り出して、それでもルル達が目覚めるのを待ち続ける。やがておなかが空洞になったような不快感に襲われて、
「……食事、作っとく?」
「そうだね」
 気乗りしないながらも、僕らは立ち上がった。まずは……
「リーフの食料倉は何処だろう」
 家の中を探しまわって、
「あっ、此処だよ!」
 ラウフが地下室への隠し通路を発見!
「行こう!」
 かすかにだけど喜び勇んでおりていったけど、
「少ないね……」
 すぐに気落ちした。新鮮な甘菜(あまな)(果物)や食菜(しょくさい)(野菜)、フーシア(香料)が少しあるだけ。一人暮らしだからかな。だけど、
「でも、これでおなかはいっぱいになると思うよ」
 という僕の言葉通り、四匹の空腹を満たすには、充分だった。
「よし、これを上に持っていこう!」
 僕らは、新鮮な甘菜を運び出した。リーフとルルは、まだ目覚めない。僕とラウフは顔を見合わせた。
「どうする?」
「どうもこうも……コレを洗って、食べられるようにするしかないか」
 リーフの洞穴(ほらあな)のそばには、細いけど川が流れてる。それが中央海(セントラル・スィー)につながっているんだ(本流じゃないけどね)。
 僕らはその川で、甘菜を洗った。汚れを落とすと、それはとても美味しそうに見えてくる。
「さて、綺麗になったね」
「そろそろ戻ろ?」
「そうだね」
 僕らは洞穴に戻った。すると……っ!
「おい、何処行ってたんだよ」
「うわあ――――!!」
 り、り、っリーフっっ!! 僕ら、思わず悲鳴をあげちゃった。
「おい、何も驚くことないだろ」
 焦ったようなリーフに、ラウフが言い訳する。
「だ、だ、だって、ずっと寝てたから、起きてるとは思わなかったんだもん!」
「起きちゃ悪いのかよ!」
「そ、そんなこと、言ってません!」
「悪いような口ぶりだろ!」
「そんなつもりはありません!」
「もうやめて」
 静かな声がして、はっと僕らは振り返った。
 ルル!
「もうやめて」
 もう一度、ルルが言う。
「喧嘩なんて、しないで。お願いだから」
 片手で体を支える格好で、ルルが静かに言う。その言葉に、僕も、ラウフも、リーフも、沈黙した。
「……悪かった」
 リーフがやがて行って、どかっと地面に座り込んだ。
「ごめんなさい」
 ラウフもぽつっとつぶやいた。それを聞いたルルは、ほうっと息を漏らして、再び横になった。
「ルル大丈夫!?」
 僕が駆け寄ると、ルルは心もち青い顔色をしてたけど、にこっと笑ってくれた。
「大丈夫。ただ疲れただけ」
「ホントに? ホントに、大丈夫なの?」
「うん」
 それで、僕の何処かにある緊張の糸がほどけたみたい。矢継ぎ早に質問攻め。
「じゃあ、ルル、どっか痛いところはないんだね。おなかすいてない? 甘菜(あまな)があるよ。ラウフと二匹で洗ったんだから。美味しいよ? 食べる? あっ、もう少し寝てる? それから食べる? どっちでもいいよ。あ、ここはリーフの家だよ。あの白いわっかの近くにあった洞穴(ほらあな)だよ」
 ルルは、分かったよ、というように、首を縦に振った。
「じゃあ、甘菜を、食べてから、……そうだ、リーフさん」
「何だい」
 ルルはリーフに言った。
「一晩、泊めてもらってよろしいですか」
 すると、リーフはハアッ!? と驚きながらのけぞった! 駄目なのかなあ?
 だけど、そんな僕の思考に反して。
「おいおい、もうこんな時間だぜ。これから中央市に帰るのかよ。遅すぎるって! 泊めてもらっていいかなんて訊かれる前に、俺はとっととお前らを泊めるつもりだったんだがよ!」
「えっ?」
 そうなの? 僕、ビックリ。
「一晩だけじゃなくて、二晩ぐらいよくねえ? こっちは大、大、大歓迎だぜ! と・く・に! そこのオチビさん。もうちっと修行しないと、生きてけないぜ?」
 ラウフは真っ赤になった。
「い、いいじゃないですか、関係ないし……」
 でも、僕個人的には、此処で休んでいくのに賛成。ルルはまだ完全に回復してないし、ラウフもきっと疲れてる。
 だから――
「じゃあ、お願いします!」

 

 リーフの家に、僕らは二泊させてもらった。その間に、出来ることをいっぱいやった!
 例えば、水汲み。食事も作ったし、皆で修行もした。特に、ラウフが上達した。くっそー、追いつかれないようにもっと修行しなきゃ!
 そして、とうとう別れの日・四日がやってきた。
「本当に、もう行っちまうのか?」
 リーフは残念そう。けれど、ルルはきっぱり。
「ハイ。ありがとうございました!」
「ありがと、リーフ。僕、一昨日と昨日と今日で、ずいぶん強くなったみたいだよ!」
 おいおいラウフ。“一昨日と昨日と今日”って……短く“三日間”って言えないの!?
「そりゃよかったね……」
 リーフも、ラウフの言葉に苦笑する。
「とにかく、もう行きます。お元気で」
 ルルが言って、僕とラウフは打ち合わせ通り、
「せーのっ、ありがとうございましたあ!」
 そしてピョコンと頭を下げた。
「では」
 ルルを先頭に、僕らは歩き出した!
「気をつけろよ。また、遊びに来いよー!」
 背中に聞こえる声。
「そしたら、ビシバシ鍛えてやるかんなー!」

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