スラッシュ☆モンスター
第T部@

・☆ 3.ウィンドからの手紙

 山へ行きウィンドと出会ってから五つの日が経った。七の月二十一の日。ルルが、うちに駆け込んできた!
「レナル!」
 ルルの息は、はあはあと荒かった。走ってきたんだ。ってことは……何か大変なことが!?
「どうしたの、ルル!?」
 ルルは息を落ち着けてから、持っていたものを差し出した。
「これ……ウィンドからの、手紙……」
「おおっ!」
 そう、それは、まさしくウィンドからの手紙だったんだ!
「読もう読もう!」
「ちょっと待って」
 ルルが制した。
「ラウフも呼ばなくちゃ」
「あ、そーか」
 全く忘れていた。よし、さっそくラウフに知らせよう!
 てゆーか、
「ねえねえ……ラウフのうちにいったほうが早くない?」
「そうだね……」
 というわけで、僕らはラウフのうちに向かったのだった。

 

「ラウフ〜!」
 ムチ族β氏の入り口。僕は中に呼びかけた。
 しばらくして、ラウフが出てきた。……なんかねむそ〜な顔をしてるのは気のせい……?
 ま、それは置いといて。
「何〜?」
「ニュース。ニュース!」
「へ?」
 む、ラウフが寝起きなのは間違いなさそうだ。僕はもったいぶった。
「あのね」
「何」
「あのね」
「何」
「あのね」
「だから、何?」
「ふふふっ」
「ん〜」
「聞いて驚くなよ」
「も〜う、早く教えてよ!」
 ラウフはじだんだを踏んだ。ルルが、まったくもう、という顔をして、
「ウィンドから、手紙が来たの」
「ええええええええええええええええ――――――――――ッッッ!!」
 僕とルルは思わず耳をふさいだ。ラウフったら、いくら驚いたからって、他人の耳元で叫ぶなっ!
「うるさい、ラウフ!」
「勘弁してよ!」
「ごめん……」
 ラウフがしゅんとしおれる。気を取り直そう!
「ねえ、何て書いてあるの?」
「まだ読んでないよ」
「早く早く!」
 ルルが封を切った。中の便箋を取り出して、読んだ。

『日増しに暑くなってきました。お久しぶりです。ウィンドです。元気にしていますか? 僕は元気です。
 さて、先日約束したとおり、謎の生物の資料をお送りします。皆を見つけたら、僕も久しぶりに会いたいと思いますので、連絡してください。

名前性別姿居場所
ソイル白いネズミ地面
ウォーターグレーのネコ
サンダーオレンジのネコ
ファイアグレーのイヌ
リーフ茶色のイヌ

 では、頑張って探してみてください。また手紙書きます。
ウィンド』

「…………」
 僕らはしばらく無言だった。やがて、ラウフがヒステリーを起こした!
「――雷の中なんて行けるかあ! 第一、雷ってどこだー! どこだー! どこだー! どこだー! どこだー! どこだあー!」
「ラウフッ!」
 ルルが一喝した。そこでラウフははっと我に返り、再びしゅんとしおれた。
「ごめんなさい……ただ、僕はただ……」
「いいのよ、ラウフ」
 今度は優しくルルが言った。ルルはラウフの背中をゆっくりと撫でている。
「いいのよ、ラウフ。わたし達はまだ経験が浅いから、何もかも分かるわけじゃないのよ」
「うん……うん……」
 ラウフは、泣きそうだ。表情が崩れている。僕も言った。
「そうだよラウフ。……え〜っと……サンダーさんが行けるなら、僕らだって行けるよ」
「うん」
 ラウフはごしごしと顔をこすると、きりっと前を向いた。
「よし。雷だね。どう行くのか、考えよう!」
 ラウフのいいところは、切り替えの速いところ。切り替えが速いということは、とてもいいことだよね!
「雷かあ……」
「何処だろ……」
「う〜ん……」
 僕らは考えた。頭が熱をもってくるほどね!
「あ!」
 突然、ルルが叫んだ!
「ルル!?」
「どうしたの!?」
「思いついた!」
「ええっ!?」
 僕とラウフ、思わず大声をあげちゃった。
「何々!?」
「教えて教えて!」
 必死でせがむと、ルルは困ったように苦笑い。そして、ポツンと一言。
「……雷雲」
「はい?」
 騒いでいた僕とラウフは、ポカンと口を開けた。まったくもう、とルルは呟き、あきれたように言った。
「だから、雷雲。雷雲の上なら、」
 そしてニヤリと微笑む。
「行けるかもしれない」
 どしぇええ〜〜〜〜〜!!
「――すごいッッ!!」
 僕らはルルに尊敬の眼差しを向けた。ルル、後ずさり。
「え……」
「すごいルル!」
「あ、あの〜……」
「全ッ然、思いつかなかった!」
「さすがだね!」
 自分でも気が付かないうちに、ルルを追い詰めていく。ルルは、壁に背中をトン、とぶつけた。
「ルル様!」
「貴女様は、わたくし達の天使です!」
「あ、あのね、」
 ルルはすっかり困りきって、
「こんなことやってる間に、色んな事出来るよ? まだ時間はあるから、これから雷雲にのぼってみようよ、ね? ほら、空には雷雲が」
 ハッ! と僕らが窓の外を見た瞬間、ルルは僕らの包囲網から抜け出した。確かに、雷雲がモクモクとわき立つのが見える。
「行く?」
「行こう!」
 僕らは全速力で、ムチβ家をとび出した!

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