スラッシュ☆モンスター
第T部@

・☆ 2.この山は謎だらけ!

 あ〜ん、どうしてこの山はこんなに変なの〜?
 道がやけに広いことは問題ないんだけど……時々湖があって、そこにはなんと、古代の生き物がいるんだよ!
 あ、古代の生き物って、恐竜のことね。遠い昔に絶滅しちゃったから、いるわけないんだけれど……。
「うあ〜! 古代の生き物だ〜!」
「いっぱいいる。ここ、ホントに現代?」
 ラウフはおびえまくり。ルルも顔色が悪い。僕の背中に悪寒がはしった直後、僕らの頭上すれすれを、翼竜が飛んでいった。コワッ!
 僕達、恐竜の湖で休んでいるんだけれど、これがこわいこわい。
 太い脚や、首の長い恐竜達たちが、こっちをじーっとにらんでるんだもん!
『なんだ? こいつら?』
 って言ってるのが聞こえてくるみたい! うぎゃー!
 そんなこんなで、おやつものどを通りにくい。
 そんな時、
「! み、見て!」
 上を見上げていたルルが、突然叫んだ!
「どうしたの!?」
 僕も上を見る。僕たちの頭上を、一匹の翼竜が旋回しながらこっちに向かっておりてくる! 太陽の逆光になって、形しか見えない。
「――!」
 ザッ!
 と音をたてて、翼竜は着地した。ラウフの目の前。ラウフったら、あわあわと目を見開いてる!
 翼竜は、翼をたたんだ。背中は緑、おなかは黄色をしているのが見えた。
「こんにちは」
 どこかから、そんな声が聞こえてきたのは、その時だった。
「えっ!?」
 僕らはきょろきょろと辺りを見回した。でも、声の主は見当たらない。
「何処?」
「ここだよ。君たちの真ん前」
 僕らはぎょっとした。もしかして……と思いながら、翼竜を見つめる。こいつしかありえない。
「キミ?」
「そうだよ」
 こくっと、あっさり翼竜は首を縦に振った。
 しゃべる翼竜? 何それ!
「うそ……」
 ルルが呆然とつぶやく。皆、声も出ない。
「だ、誰ですか……?」
 僕はやっとのことで声を絞り出して、翼竜にきいた。翼竜は、答えてくれた。にこっと笑って。
「僕は、翼竜のウィンドといいます。……貴方がたは?」
 訊かれたら、もちろん! 答えるべきだよねっ!
「僕は、ショル族α氏のレナルです」
「私は、チョル族α氏のキルルといいます」
「ラ! ラ、ララ、ラララ、ラウラウラウフですぅっ!」
「……こっちは、ムチ族β氏のラウフです……」
 緊張したラウフを僕が紹介した。まったく、世話がやけるんだから!
 ウィンドは、もの珍しそうに僕らを眺めた。僕らもウィンドをじっと見つめた。
 やがて、ウィンドが口を開いた。
「貴方達は、何故この山に?」
「どうする?」
 僕はルルにささやいた。まだ出会ったばかりなのに、僕達の行動(予定だけど)を教えていいのだろうか? ってね。
 ルルはその答えを、行動で示した。
「この山が……本当に危ない山なのか……確かめに」
「フフフッ、君達はこわいもの知らずかな?」
 ウィンドは、朗らかに笑った。
「この山は迷路みたいで、入った人は迷って出られなくなってしまうんです。運が悪ければ、肉食獣に食われてしまうことも……」
 僕たちの背中に、何か冷たいものがはしった。食われる? そんなの、嫌だ!
 するとウィンドは、右翼を右側に突き出して、
「なので、仲間になります。君達の、案内をしてあげましょう」
 って、言ってくれたんだ!
「ホントですか!?」
「もちろん」
 ヤッター! ウィンドはいい案内人だね! ラッキー!

 

 ウィンドは、珍しい恐竜の住処や、食事場所、バトルシーンなんかを見せてくれた。どれも迫力があって、なんと実際に触っちゃった! 夢とは思えないよ!
 その後。ウィンドはどこからか取り出したそれをくれたんだ。
「これをあげるよ。僕達の、友情の証」
 それは、五つの玉だった。青、白、赤、黒、そして黄色。表面には、白っぽい渦がある。なんだこれ?
「それは――僕にもよく分からないですけど――不思議な力を持っているようです」
 ふーん、そうなんだー。なんか、ワクワクする!
 三匹で玉を覗き込んでいると、ウィンドが笑いながら言った。
「皆さん、冒険とか、危険とか、お好きでしょう?」
 わっ、図星!
「はい! そうです!」
「じゃあいいことがあるんだけど」
 ウィンドはいたずらっぽく笑った。なになに? 知りたい! うおー、体がうずうずしてきた!
「僕みたいに、しゃべる謎の生き物が、あと五匹こちらに来てるはずなんだ。探してみたら?」
 僕達は顔を見合わせた。ルルの顔も、ラウフの顔も、期待にキラキラと輝いていた! ということは……僕の顔も!
 僕達は声を合わせて、
「もちろん!」
「なら、手紙で情報を教えよう。……誰か、代表で住所を教えてくれないかなあ?」
「じゃあ、私が」
 ルルが進み出て、ウィンドに住所を教えた。
「では、ルルさんのおうちに手紙を送りますから
「はい! 待ってます!」

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