イルスの宿木 0章


 その枝は、淡く光を放っていた。
 ぶっといともほそっこいとも表現できない太さ。ともすれば手折れてしまいそうなのに、妙なほどの存在感を持ち、中心辺りで二つに分岐している。その片方の先には枯れ色の葉が一枚だけ弱々しく止まっていて、そして全体を覆うように発光している。
 緑がかった虹の色。
 少女は一人、その枝を腕に抱いて立っていた。
「そう。全ては偶然であり必然なの」
 透明な声が空気を微かに震わせる。愛おしむようにそっと抱き締めた枝に語りかける。
「あなたが私に選ばれたのも、私があなたを選んだのも。創世殿が世界を作り出したのも。彼らが大切なものを奪われたのも」
 白い肌に纏うのは、薄桃色のワンピース。地に付くほど長い灰白色の髪を無造作に風へと散らし、漆黒の瞳は無感情に眇められている。色の薄い唇を開く。
「誰かが歓喜に沸き、誰かが悲哀に咽(むせ)ぶ。そうやって世界は動いていく」
 緩慢な動作で、少女は首を傾げた。口の端を吊り上げて笑みをかたどり、裸足の足を一歩、前へと運んだ。さらにもう一歩。
「どれだけのヒトが、運命に抗おうともがくのかしら」
 そして身を翻らせると、直後その空間には何もなくなった。

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あとがき

初めまして、井上沙乃莉(sanori0128)と申します。初投稿となります。
えー、かなり即興で書いたのでところどころおかしいところがあるかもしれませんが、
どうか多めに見てください。
これは0章ということで、つまりは序章です。
これから話が展開していくと、思われます。はい。これからです。
主人公は少年と少女の予定で。ええ予定です。予定なんです。
探し物の旅に出かけます。
下手すると後々かなりストーリー変わるんで、ここにはあまり細かくは書きません。
今回はこのへんで。
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