alba-創の館_Lyric

二重狂歌

青い風は遠凪ぎ
豊かの海の 香り止めた
深い木々はざわめき
彼方昔の 唄囁いた

閉じられたまぶたの裏に 映し出された一刻前
胸を貫く深紅の爪 霞がかって鮮明に

〈罪を認めよ 罰を受けよ〉

記憶 閉ざしまた眼を覚まし
繰り返すことを拒む
廻(まわ)る 緋色の風車を
手折った細い指を持つは
誰(たれ)なのか



泉には清水湧き
澄んだ水面に 姿映した

青ざめた頬を伝った 透明で紅い一筋は
雫の玉を模って 地に濁った池を作る

〈罪を許せよ 涙を流せよ〉

望み 疲れ諦めたのに
繰り返し夢見ている
廻(めぐ)る 流転輪廻の中で
奪われた小さな命の
零れ咲く



振り返れば優しい笑顔がある
無意識のうちに拒んでしまいそうなほど
やわらかくて あたたかくて
私はワタシじゃないのだと……

〈眼を覚ませよ 耳を澄ませよ〉

歪み 縺(もつ)れはぐれてもまた
めぐり合える そう信じ
照らす 月華と星屑達
一人でも生きていけるなら
まだ まだ 希望は捨てられない

纏う 赤と黒の穢れも
全て私 受け入れよう
永久(とわ)に 捨てることのできない
刻まれた証でさえも
私なのだから

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