alba-創の館_Lyric

深宮花

咲き誇る箱庭の花 崇拝と嫉妬を受け
この場の主役は私 舞台には己だけ
眺める高貴の方々 綿毛散らした扇を
ゆるやかに動かしつつ そっと微笑をこぼす

塔の中から見下ろす世界は
美しいほどに醜くて
端から朽ち果ててゆくの

細い指 絡み付く蔦の瑞々さよ
そして 種を埋めて茎を伸ばし 吸い尽くす血潮
爪を立て 腕広げ 白く舞うレースのように
心 翔ける空に飛び立つ



忍び咲く路傍の花 名を知られることもなく
身をかがめてすすり泣く 寄り添い合う同胞
身に着けるかすれた衣 磨り減ったままの靴
生きるための手段など 選ぶほど数はない

柵の外から見上げる世界は
狂おしいほどに美しくて
己を傷つけてゆくの

細い首 絡み付く糸が締め上げられて
そして 手はここへ足はそこへ 操られる形
闇の中 手の中で 揺れて散るヒカリのように
体 崩れた欠片を放つ



香り立つ 指先に真珠の雫留む
そっと 蕾開き池に浮かぶ 薔薇の花弁

長い髪 絡む真実と謀の
元は 争いを招き寄せた 時の美しよ
凍り付く 我が身さえ 捨てて呼ぶコトバのように
命 超えて世界を求む 嗚呼



形…かた 留む…とむ
薔薇の花弁…そうびのはなびら 謀…はかりごと

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